アリの種類を見分ける際、大きさや形状と並んで重要な手がかりとなるのが「体色」と「模様」です。日本に生息するアリだけでも、その色は黒や茶色だけでなく、赤、黄、橙色など様々で、時には複数の色が混じっていたり、特徴的な模様が見られたりします。これらの視覚的な特徴に注目することで、種類を絞り込むことができます。最も一般的な色はやはり「黒色」です。クロオオアリやクロヤマアリ、クロクサアリなど、多くの種類が黒い体色をしています。同じ黒色でも、クロオオアリのように光沢が強いもの、クロヤマアリのようにややマットな質感のものなど、微妙な違いがあります。次に多いのが「茶褐色」のアリです。トビイロケアリやトビイロシワアリなどが代表的です。これらはしばしば行列を作って家屋に侵入することがあります。茶褐色の中でも、明るい茶色から黒に近い焦げ茶色まで、色の濃淡には幅があります。より明るい「黄色」や「飴色」のアリもいます。家屋害虫として知られるイエヒメアリは淡い黄褐色ですし、アメイロアリの仲間もその名の通り飴色をしています。これらの明るい色のアリは体が小さいことが多いのも特徴です。中には、「赤色」や「赤褐色」が目立つアリもいます。例えばムネアカオオアリは、頭部と腹部は黒いですが、胸部がはっきりとした赤色をしており、非常に特徴的な配色で見分けやすい種類です。危険な外来種であるヒアリも、全体的に赤褐色で、腹部がやや暗い色をしています。また、単色だけでなく、「二色性」を示すアリもいます。上記のムネアカオオアリのように、体の部位によって色が異なる種類です。アシナガアリの仲間には、頭部と腹部が黒く、胸部と脚が赤褐色といった配色を持つものがいます。さらに、体表の「模様」が識別のポイントになることもあります。アミメアリは、胸部に網目状の模様があることからその名が付けられました。トビイロシワアリは、体表に細かいシワが見られます。これらの模様はルーペなどで拡大しないと確認が難しい場合もありますが、重要な識別点となります。このように、アリの体色や模様は種類によって非常に多様です。アリを見かけたら、まずはその色や模様を注意深く観察してみることから始めてみましょう。他の特徴(大きさ、形状、生息場所など)と組み合わせることで、より正確な種類の特定に繋がります。