ゴミ屋敷を相続したら相続放棄はできるのか
親が亡くなり、遺品整理のために久しぶりに実家のドアを開けた瞬間、言葉を失う。そこに広がっていたのは、思い出の詰まった我が家ではなく、足の踏み場もないほどのゴミの山だった。これは、決して他人事ではない、現代社会で増加している悲劇の一つです。突然「ゴミ屋敷」の相続人になってしまった時、多くの人は絶望感と途方に暮れることでしょう。片付けには膨大な時間と労力、そして何より高額な費用がかかります。専門業者に依頼すれば、その費用は数十万円から、場合によっては数百万円にものぼることもあります。さらに、固定資産税の支払いや、悪臭・害虫による近隣からの苦情対応など、負の遺産は金銭的な負担だけにとどまりません。このような状況で、相続人は全ての財産と負債を引き継ぐ「単純承認」をするべきなのでしょうか。いいえ、法律は私たちに「相続放棄」という選択肢を与えています。相続放棄とは、被相続人(亡くなった人)のプラスの財産(預貯金や不動産など)もマイナスの財産(借金やゴミ屋敷の管理責任など)も、その一切を相続しないと家庭裁判所に申し立てる手続きです。これにより、相続人はゴミ屋敷の片付け義務や管理責任から法的に解放されるのです。しかし、この相続放棄は、メリットばかりではありません。一度手続きをすると、原則として撤回はできず、後から価値のある財産が見つかったとしても、それを相続することはできません。ゴミ屋敷というマイナスの側面に目を奪われがちですが、冷静に状況を判断し、最善の選択をすることが求められます。