親が残した家がゴミ屋敷だった。その衝撃的な事実を前に、多くの相続人が真っ先に考えるのは「相続放棄」かもしれません。しかし、ゴミの山というマイナスの側面に目を奪われ、安易に相続放棄を選択してしまうと、後で大きな後悔をすることになる可能性があります。なぜなら、相続放棄は、借金やゴミ屋敷の片付け義務といったマイナスの財産だけでなく、預貯金や有価証券、価値のある不動産といったプラスの財産も全て手放す手続きだからです。ゴミ屋敷の中には、一見するとガラクタの山にしか見えなくても、思わぬ「お宝」が眠っているケースが少なくありません。では、相続放棄を決断する前に、どのように財産調査を進めればよいのでしょうか。まず重要なのは、相続放棄の期限である3ヶ月以内に、大まかな財産の全体像を把握することです。ただし、前述の通り、勝手に遺品を処分したり持ち出したりすると相続放棄ができなくなるリスクがあるため、調査は慎重に行わなければなりません。探すべきは、預金通帳やキャッシュカード、証券会社からの郵便物、保険証書、不動産の権利証、貴金属や骨董品などです。郵便物が溜まっている場合は、金融機関や役所からの重要な通知が埋もれている可能性があります。これらの調査を、ゴミの山の中から自力で行うのは非常に困難であり、精神的な負担も大きいでしょう。そこで有効なのが、専門家の力を借りることです。遺品整理業者の中には、財産調査の経験が豊富な業者もいます。弁護士や司法書士に相談すれば、法的なリスクを回避しながら、安全に調査を進めるためのアドバイスを得られます。相続放棄は、あくまで最終手段です。まずは冷静に財産調査を行い、プラスの財産とマイナスの財産を天秤にかけた上で、本当に放棄すべきかどうかを判断することが、後悔しないための賢明な選択と言えるでしょう。